レタッチの仕事をやっていると、商品写真の下や人物の足元に影を追加してくださいと言われることがよくあります。
商品撮影時に影も撮ってくれている場合もあるのですが、影の撮影素材がない場合は自分で作ることもよくあります。
Photoshopで作る影は単純なようで、適当にやってしまうと不自然さが出てきてしまいます。
- 商品の影を作りたいけど、どういうところに気をつかって進めていけばよいのかわからない
- 影のことなんてあまり考えていなかったけど、よりリアリティを感じさせる影ってどういうものなのか
この記事ではこのような疑問に答えると同時に、影が不自然に見えるのはどういうときなのか、どのように影を作れば自然に見えるのかを読み解きながら解説していきます。
商品写真等のレタッチだけではなく、デジタルコラージュやデザインなどにも役立つ知識だと思います。
ぜひ見ていってください。
今回はこちらの缶の画像を使って例を挙げて説明していきます。
適当な撮影画像がなかったのでオリジナルの3DCGでできた飲料缶です。撮影されたものとして読んでください。
商品写真の影が不自然に見える例
影が不自然に見える場合には次のようなものがあげられると思います。
影が一律にぼけているケース
実際の商品広告でもこのような影の画像はよく見られます。
一見リアルに見えるかもしれませんが、影の階調が一辺倒で一律にぼかしたような影になっています。
影の強弱にも注目してみましょう。
缶の下端と床面との境目がくっきりしすぎていてやや浮いている感があります。
実際に缶が置いてある場合、缶と床面のきわのところにもっと濃い影ができるはずです。
商品と床の影の角度があっていないケース
こちらは少し極端にしましたが、ここまででなくても床の角度と商品の底の角度があってないように見える広告画像もよくあります。
こちらも”床面を感じさせる影”という点をもっと詰める必要があります。
図のようにパース(遠近法)感を同じ角度の場所にある2つの円として合わせる必要があります。
影だけ縦長の形になっているので、床面が手前に傾いたような感じに見えてしまいます。
影の中心がずれているケース
こちらも大げさ目にしましたが、缶の底の中心と影の中心がずれているため、缶が浮いている感じがしてしまいます。
このシチュエーションの場合、缶の底に想定される円と、影の円は中心を合わせる必要があります。
ほぼ真上から光が来ている場合は缶の底と、缶の下に来る影の中心は同じ点になります。
影を変形で作ったケース
このように伸びていく影をつける場合は、Photoshopで物体のシルエットを変形して影の形を作ることが多いです。
変形してそのままの影だと実際の影とは異なってしまう点に注意が必要です。
このシチュエーションの場合、天面と底面にあたる部分の影に丸みが足りません。
この場合は天面と底面にあたる部分の影を少し丸めてやると影の形がもっとリアルになります。
また、影のぼけ具合にはもっと強弱が必要です。
床面の位置が商品に近いほど影の輪郭はシャープになり、缶から離れていくほどぼけた影になるはずです。
Photoshopで影を追加するときに重視するポイント
こちらがよりリアルに見える影です。
重視するポイントは次のようなポイントです。
- 缶の底と影の中心が同じで、影の円も缶の底の延長上にある
- 影に強弱があり、接地している感じ
- 影から想定される床の角度と缶の底の角度があっている
この商品の場合、缶の底は円形なので、真下に落ちる影の場合は同じく円形になります。
缶の底と影は同心円上にきます。
影のきわが濃くなったことで、接地している感じが出ます。
缶の形がそのまま下に降りて行った位置に影の輪郭があります。
なぜ商品写真の影が不自然に見えてしまうのか
どういうシチュエーションでどのような影ができるのかは、光と陰影のパターンのようなものがあります。
このパターンがわかっていないと、見る人があれっ?と思ってしまうような影を作ってしまうことが多いです。
影に限らず、レタッチワークは”いかに自然に見せるか”という仕事なので、”どういうものが自然であるか”ということを理解しているとより早く正解に近づくことができると思います。
光と陰影のパターンをつかめない場合は、身の周りにある物で実際に同じようなシチュエーションを作ってみることが近道です。
缶の商品であれば実際に同じような缶を用意して、同じような光を当ててみるとどのような影ができるのか想像がつきやすいでしょう。
もしBlenderなどの3DCGアプリケーションが使える場合は、CG上で同じような形を作って光を当てて試してみると光の挙動のパターンがわかってくると思います。
リアルな3DCGを使った影の見本
それでは実際に3DCGを使った画像でどのような環境でどのような影ができるのかを見ていきます。
近年の3DCGは光の挙動も完璧と言えないまでも、現実に近い結果を吐き出すことができるので見本になると思います。
「物体がこのような形の時はこんな影ができるんだな」とざっくりと知っておけば、影を作るときに想像がつきやすくなります。
それでは見ていきましょう。
直接光でできる影
まずは直接光でできる基本的な形の影です。
直接光というのは何かに一度も跳ね返っていない光のことで、ざっくり言うと太陽光です。
かたい輪郭の影になりますが、物体から離れるにつれて影の輪郭がぼけていきます。
間接光でできる影
次は間接光による影です。間接光は屋内などで複数回跳ね返った光のことです。
光が乱反射して物体を照らすため、影の輪郭はぼやけてなめらかになります。
コースティクスの影響
商品写真の場合、物体がガラスでできていることも多いです。
ガラスなどの透過素材はコースティクスという光の粗密を生み出すため、影の内部が明るく照らされることが多いです。
コースティクスがどのような形で入ってくるかは予想がしづらいです。
間接光+ガラスの場合はコースティクスの影響は直接光の場合と変わらず、影の輪郭のみがぼけるといった感じになります。
透明な物体がからんでくる場合は、コースティクスの影響を想像で描こうとしても大変なので、何か別で撮影したりCGを使うなどして補う方が無難だと思います。
まとめ
今回は少しマニアックですが、影のつけ方を説明してみました。
もちろん商品写真にはいろいろな形の商品があるので、その都度影の形も濃さも変わってくるのですが、大事にするポイントみたいなものは理解していただけたのではないかと思います。
実際に影をつけるPhotoshopの操作手順は以下の記事に解説しています。ぜひ見てみてください。
Photoshopのその他のテクニックについてはこちらにまとめています。ぜひご覧ください。
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