レタッチや加工は、写真や画像を修正し美しく仕上げるために行う作業です。
一般的には微妙な違いがあるとされていますが、実際にはその境界線は曖昧で、同じ作業と捉えることもできます。
この記事ではレタッチと加工の意味について、現役レタッチャーが詳しく解説します。
画像のレタッチと加工の違い
レタッチや加工・修正・補正という言葉はどういう使い分けをするのでしょうか。
「加工・修正・補正」はレタッチに含まれる
- レタッチは画像の加工や修正と何が違うの?
- レタッチって補正と違って画像に手を加えているから自然じゃない
SNSなどでよくこんな言葉を見ます。
レタッチ(Photo Retouch)という言葉は「再度手を加える・修正する」という意味ですから(レタッチとはの記事参照)、かなり幅広い言葉です。
「加工・修正・補正」もレタッチの意味に含まれると言っていいです。
レタッチと加工・修正・補正という言葉のニュアンスの違い
「レタッチ・加工・修正・補正」という言葉でよく使われるニュアンス
「人物のレタッチ」こそがレタッチだと思っている人もいれば、「画像の合成」をレタッチと捉えている人もいますが、レタッチという言葉自体には厳密な定義はありません。
しかし大まかに言うと、次のようなニュアンスでとらえている人が多いと思います。
- レタッチ…人物の肌の修正に使われることが多い
- 加工…比較的大きい規模の編集
- 修正…比較的軽度な編集
- 補正…ごく軽度な色補正・形状補正など
よくカメラマンの方で「レタッチを使わない」ことにこだわる方がおられるのですが、みなさんが目にする商業印刷物で「画像の加工」がなされていないものというのは、ほぼないと言っても過言ではないです。
商業印刷物はレタッチ会社やレタッチャーが携わっていなくても、通常印刷会社の方で色補正は行われています。
カメラマンさんが行っている”写真の現像”も「意図的に調整を加えている」という意味ではレタッチと捉えることができます。
レタッチ・写真の加工アプリケーションPhotoshop
静止画レタッチの世界で使われているアプリケーションは100%と言っていいほどAdobe Photoshop(アドビ フォトショップ)です。
他に代替アプリケーションとして、Photoshop ElementsやAffinity PhotoやLuminar、GIMPといったアプリケーションも使われることがあります。
Photoshopはレタッチの世界では古くからあるパソコン用のレタッチアプリケーションで、特にバージョン4以降はプロのレタッチャーにも使われてきました。
今でも他のアプリケーションでは追いつけない機能性があり、デザイン・印刷・Web・CG業界で広く使われています。
詳しくはPhotoshopでできることの記事や、Photoshop基礎知識のまとめページをご覧ください。
レタッチを自然に見せるためには
下手に合成や修正レタッチをすると、見た人は当然違和感を感じてしまいます。いかに自然にレタッチしていないかのように見せるかというのが、レタッチ技術の大事な要素の一つです。
そこにデッサン力というものが関係してきます。デッサン力というのはただものを写し取って描く能力だけではなく、ものを注意深く見て描くことによって得られる、物理法則への理解も含まれます。
物が置かれているときに光がどのようなふるまいをするのか、人間の目はどのようにものをとらえるのかを把握しているかどうかが、観察眼の良しあしになります。
そのような意味でデッサンをして観察眼を磨くというのは、レタッチの技術力向上にかかわってきます。
レタッチにデッサン力は必要なのか
レタッチにデッサン力は必要なのかといえば、観察力や必要な情報を見分ける能力という意味では必要だと思います。
美術大学の絵画科に入るような”描画の能力”という意味でも持っていた方が便利ですが、絵が描けなくてもレタッチャーとしてやっている人は大勢います。
私の見てきた範囲ですと、レタッチャーは写真・デザインから入ってきた人がほとんどで、絵から入ってきている人は本当に少ないです。また、全然関係のない分野から入っている人も多々います。
私自身は元々絵を描くのが好きでやっていたところがあるので、絵が描けるレタッチャー仲間がもっと増えてほしいですが、絵の学習が未経験でもPhotoshopスキルと向上心でやっていけている人も周りに大勢います。
多くの写真を光の法則を意識して見ることで、デッサン力は鍛えていくことができます。
実際のレタッチでどういう場面で描画の能力を持っていた方が便利かというと、レタッチの仕事では合成するときのなじませとか、特殊効果を描き足したり、影を追加したりするときにブラシで描いていくことがよくあります。ここで描画の技術が生きてきます。
また色や構図の感覚も役立っているなと思うことがあります。
Photoshopのトーンカーブで色を調整するときにも、実際にその対象物がその状況にあるときにどのような色だと自然かという感覚が必要になってきます。
そのように私自身は過去に絵をやっていたことが活かせるなと感じることが多々あり、逆に絵が不得意であろう人のレタッチを見て、「あーもっと影をこうすればいいのに」とか「ここを変に修正したことで立体感なくなってるなあ」とか、もどかしいような思いを感じるときもあります。
レタッチになくてもいいけどあると強いのがデッサン力です。
クライアントとのコミュニケーションにも有効
私の印象では広告代理店、制作会社の制作担当の人たちは美術大学出身の人が多いです。
彼らと制作内容について打ち合わせするときに構図・色彩などの点で深いコミュニケーションが取れることが、よりよい制作物を仕上げることにつながりますし、技術者として信用をしてもらうことができます。
知識と技術両面でレタッチ制作にあたることでクライアントやディレクターに意見を求められたときに、制作物をよくするための効果的なアドバイスをすることもできます。
まとめ
今回の記事はレタッチのコラムのようになりましたが、いかがでしたでしょうか。
ちょっとマニアックな話題になってしまったので興味を持っていただけたかはわかりませんが、レタッチの言葉の範囲とデッサンのお話でした。
レタッチ関係の情報についてはこちらのページにまとめています。ぜひご覧ください。
コメント